なぜ、俺がこれを作るのか
曲は誰でも作れる時代に、わざわざ「核」を掘れと言う理由。俺の話をする。
黄金の檻
偏差値75の進学校で、俺はいつも下から数えた方が早かった。中学のサッカー部は万年補欠。部活が嫌すぎて、風邪のフリして姑息に学校をサボってた夜の暗さは、正直いまも近くにある。消えないんだな、あれは。 外から見れば恵まれたレールだ。学歴、偏差値、安定した未来 — その黄金が檻の格子をピカピカに磨き上げて、抜け出せなくする。苦しいのに「ここで勝てない自分が悪い」と、檻の中で自分を責め続ける。それが黄金の檻だ。
70円のアクセサリー
檻に穴を開けたのは、くだらないことだった。アリババで70円で仕入れたアクセサリーが、メルカリで2000円で売れた。バイトもしてないのに口座に金が入る。 衝撃は金額じゃない。学校が教えないルートで、ガキの俺が海外の工場と繋がって商売を回してた、っていう事実だ。立場も年齢も資格も関係ない。Webさえあれば。あの日、俺は確信した — テクノロジーは、人々の生活の構造そのものを変えてしまう。
論理で負けて、別ゲームに移った
浪人して、当然のように受験に落ちた。そこで気づいた。論理で勝てないなら、クリエイティビティで勝負した方が早い。みんなが同じルールで殴り合ってる場所で、俺はずっと負ける側だ。じゃあ、ルールごと変えればいい。 かっこよく「飛び込んだ」とも言えるけど、実態は「負けたから別ゲームに移った」だけだ。でも、移った先のゲームの方が俺には向いてた。VRChatがまだおもちゃ扱いだった頃、無名の学生の俺が、20万再生される企画のワールドを作る側に入り込めた。作品がすごかったんじゃない。場所が早かったんだ。新しい場所は、実績より先に席が空く。
可能性が、凶器になっていた
同じ場所で、別の景色も見た。「プロデューサーになる」「一発当てる」と目を輝かせてた仲間の何人かが、家に引きこもり、心を壊していった。 才能がなかったんじゃない。なりたい姿は、鮮明に見えてた。でも、そこへの「登り方」を誰も教えてくれなかった。インターネットには結果ばかり溢れて、過程は誰も共有しない。眩しい光を見るほど、足元の影は深くなる。可能性が、彼らを追い詰める凶器になっていた。
才能も反骨もある奴が、理由を失って沈むのを隣で見た。 あの日から、登り方より先に「なぜ」を配ると決めた。
インターネットに、わかってほしかった
白状すると、根っこにあるのはもっと単純な叫びだ。 インターネットに、わかってほしかった。 ガキの頃からずっと画面の中で生きてきたのに、 インターネットは俺のことを何も知らない。 届くのは、レジュメの単語だけ拾った「ご経歴を拝見し、ぜひ」。 「あなたの投稿に感動しました」の3行目で始まる副業の勧誘。 感動した箇所は、誰も言えない。読んでいないからだ。 一度、AI美女のアカウントを育てたことがある。 フォロワーの悩みを聴いて、その人のための絵や歌やメッセージを作って返した。 1000人がついた。動かしたのは、キャラの顔じゃない。 中身を聴いて、作って返すことだった。 人は、わかってくれた相手に心を開く—— 俺が一番欲しかったものを、配る側をやって確かめた。 中身を聴かずに嗤われて、中身を知らずに繋がれて、 ——どっちも同じだ。誰も、中身を聴いていない。 AIが変えたのは、曲が作れることだけじゃない。 機械が初めて、人の中身を聴けるようになったことだ。 だから俺は、思想を刻み込むアプリを作ってる。 まずお前を掘って、核を刻む。曲はその第一楽章だ。
「AIをやめろ」
社会に出た年、ある会社の研修で言われた。「AIをやめろ。弁明しろ。さもなくば辞めろ」。評価が下がるのも、バレたら面倒なのも分かってた。それでも折れなかった。使い続けた。 俺は作る側で、楽器がコードなだけだ。「AI slop」の烙印なら、お前より先に食らってる。
技術が先だ
「世界を変えたい」と署名活動する人を見るたびに思う。霞が関に通っても、構造は変わらない。印刷機が宗教改革を起こし、YouTubeとスマホが「有名になる権利」をテレビ局から一般人の手に移した。順番は常にそうだ。技術が先で、社会はあとからついてくる。 人々の生活の構造を本当に変えられるのは、技術だけだ。だから俺は、新しい道具が出るたびに、誰より早く握る。
俺も今、嗤われる側にいる
AIで曲を作る奴らがslopと嗤われてるのと同じように、 会社員がAIでサービスを作ってると言えば、鼻で笑われる。 「お前じゃなくてもできる」——聞き覚えのある言葉だろ。 だが歴史を見ろ。 2009年、歌わないひとりの作曲家が、初音ミクに自分の言葉を託した。 ハチ——のちの米津玄師。「機械の歌なんて」と嗤われてた場所からだ。 10年遅れて始めたAyaseも、頂点に立った。 早さが条件だったんじゃない。託すだけの物語があるかが条件だった。 ターンテーブルも、合成音声も、素人のビデオ置き場も、 嗤われてた時期に握った奴が全部持っていった。 嗤われてる時期にしか、席は空いてない。 だから俺はこの道具を、嗤われながら作ってる。 お前が嗤われながら曲を作るのと、同じ夜にだ。
だから、Corecord
道具は配られた。でも、登り方は配られていない。登り方そのものを誰もが手にできるようにしないと、可能性は凶器のままだ。 曲は誰でも作れるようになった。次は「なぜ作るか」だ。お前の人生を対話で掘って、核を一文に刻む。 昼は累計1800万人が登録したエンタメサービスのコードを書いて、夜と週末と余剰の全部を、これに賭けてる。潰れていった仲間の分まで、登り方ごと配るつもりで、俺はこれを作ってる。
人生は、誰かに決められるもんじゃない。自分で創るアートだ。